カテゴリ: スターメー・アーチャーAM

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 スターメー・アーチャーAMの組み立ては、基本形であるAWとほとんど同一ですので、かんたんにお示しすることにします。詳しくはAWの項をご覧ください。
 まずバイスにアクスルシャフトを立てます。方向は右側が上です。そこにラチェットを組み込んだプラネットケージを入れます。そして3個のプラネットピニオン(ダブルピニオン)をピニオンピンで取り付けます。
 
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  このとき気をつけなければならないのは、プラネットピニオンにある線状の合わせマークをもっとも外側に向けることです。こうすると小さいほうのピニオンの歯は3個きれいに露出します。3か所ともこの位置にしてピニオンピンを落としこんで取り付けます。正しく取り付けられたら、サンピニオンとプラネットピニオンが噛み合ってプラネットケージは軽く回転します。
 また向こうに見えているラチェットのパウルはこの方向に取り付けなければなりません。
 
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 ラチェットを組み込んだギアリングを取り付けます。パウルの方向は写真どおりでなければなりません。
 
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  この写真の間違いは何でしょう? そうです、ボールリングを組み忘れています。ドライバーを先に取り付けてしまうとボールリングが取り付けられないのです。
 したがって、ボールリング、ドライバー、クラッチスプリング、スプリングキャップ、右コーンが正しい組みつけの順番です。
 右コーンは指で締めこんだ後に1/4~1/2回転ゆるめ、ロックワッシャーとロックナットを取り付けます。
 
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 組みあがった内部ユニットです。
 
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  各部にたっぷり注油してから内部ユニットをハブシェルに入れます。ボールリングを締めて合わせマークが合うのを確認したら、タガネとハンマーで締めつけます。
 
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 そして左コーン、ワッシャー、ロックナットを取り付けてベアリング調整をします。調整はややゆるめにします。最後に右からトグルチェン、左からインジケーターロッドを入れ、両者をねじ込んで固定すれば完成です。

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  スターメーAMは、AWをベースにギアレシオをクロス化しています。サンピニオンを固定した遊星ギア機構では、サンピニオンを小さく、ギアリングを大きくするほどクロスレシオになります(プラネットピニオンの歯数は関係しない)。単純に小さなサンピニオンと大きなギアリングを採用すればよいのですが、ギアリングやハブシェルは既存のものを使わないとコストが合いません。
 そこでスターメーが取った方法は、サンピニオンをAWの20Tから15Tに小径化し、これに各モデル共通の60Tのギアリングを組み合わせています。この二つの組み合わせでは十分なクロス化ができませんので、プラネットピニオンをダブルピニオンにして解決しています。
 写真は15Tのサンピニオンが、ダブルプラネットピニオンの大きいほう(25T)と噛み合っているのを示しています。右の小さいほう(14T)はギアリング(60T)と噛み合います。こうすることでもっと大きいギアリングを付けたのと同じ効果を得ているわけです。ギアレシオから、大きいほうのプラネットピニオンと噛み合う架空のギアリングを計算してみますと92.5Tということになります。
 
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 AMの全構成パーツです。AWと部品数は同じです。3速でありながらプラネットピニオンをダブルピニオンにしてクロス化させているのはまことに巧妙と言うしかありません。それによりハブシェルを大型化することなく、多くのパーツをAWと共用してコストを抑え、信頼性を高めているのです。
 同じミディアムレシオでも、4速のFMが複雑な機構を持つのに対し、3速のAMは単純なしかし巧妙な方法でクロス化を実現しています。英国のクラブサイクリストにはAM愛用者が多いと聞きますが、その理由がわかったような気がします。
 なお3速のシフトの作動原理はAWと同じなので、AWの項を参照ください。
 

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 1952年製のスターメーAMを分解します。
 
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  まずアクスルシャフトからアクスルナットとロックワッシャーを外します。アクスルナットは点検穴のあるほうが左、ないほうが右です。これぐらいの古い年式では、ロックワッシャーはこのギザ付きのものが使われていました。しかしエンドスロットの中でアクスルが回るのを防ぐのが目的ですから後期の突起のあるワッシャーのほうが実用的です。
 つぎに右のトグルチェンと左のインジケーターロッドを外します。両者はアクスル中央でねじ結合されているのでゆるめて外します。
 
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 右側を上にアクスルシャフトをバイスに固定します。そしてサークリップを外して、スプロケットと2枚のスペーサーワッシャー、アウターダストキャップを外します(AWの項参照)。
 
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  スプロケット他が外れた状態です。
 
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 アクスルを反対向きに固定し、左側のロックナット、ワッシャー、コーンを外します。
 
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  再び右側に戻り、ハブシェルをバイスに固定して、ボールリングの溝とハブフランジにペイントで合いマークを付け、ボールリングをタガネとハンマーでゆるめます。
 
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 この個体は、今まで経験したことがないほど堅く締まっており、たたき続けた溝のところが一部破損しました。しかし割れたのはグリスを入れてオイルシールをする溝の部分ですので、とくに問題はありません。
 
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 取り出した内部ユニットです、露出したプラネットピニオンが目を引きますが、ハブシェルにはこれと噛み合うギアリングはありません。
 内部の状態はまず良い部類で、茶色く見えるのは錆ではなく乾いて固着したオイルです。
 
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 ハブシェルからダストキャップとボールリテーナーを取り外します(AWの項参照)。リテーナーはボールを交換して再使用します。
 
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  アクスル右から、ロックナット、ワッシャー、ロックワッシャー、コーンを外します。そしてスプリングキャップとクラッチスプリングを抜き取ります。
 
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 ドライバー(上)、ボールリング(左下)、ギアリング(右下)を外します。これらの分解作業については省略します(AWの項参照)。
 
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  上から、スラストワッシャー、スラストリング、アクスルキー、スライディングクラッチ、クラッチスリーブを外します(AWの項参照)
 
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  アクスルシャフトからプラネットケージを外し、プラネットケージを分解すれば作業は終了です。詳しくはAWの項をご覧ください。プラネットピニオンはFWやS5と同じ左右一体のダブルピニオンです。
 
 
 

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 スターメー・アーチャーAMは、3速のAシリーズの中にあって、ワイドレシオのAWとクロスレシオのACの中間のミドルレシオモデルです。スターメーのカタログによると「クラブマンやスポーツライド愛好者の要望にこたえて設計されており、とくにマスドスタートレースに最適」と書かれています。
 そのレシオは-13.46%=0%=+15.55%で、3速フリーにすれば17-20-23T程度です。-25%=0%=+33.3%(15-20-27T相当)のAWはスポーツライドにはワイドすぎ、-7.7%=0%=+6.66%(15-16-17T相当)のACは極端なクロスですので、AWは、コースのアップダウンに制限を受けるとしても、いわゆるクラブモデルに好適です。
 AWは、ミディアムレシオ3速の前身であるKSW(1933-1938)の後を継いで、1937年に発売され1963年まで生産されました。戦前型はスチールボディのものが多いようですが、50年代のものはほとんど軽合金シェルです。3速用のトリガーレバーがもちろん使えますが、私は3速専用のトップチューブ上のレバーとAWを組み合わせたシンプルなスタイルに惹かれます。ルネ・エルスにもスターメーの軽合金シェルモデルを採用した散歩車があったそうですが、私はそれはAWであったのではないかと想像しています。
 
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 1952年7月製のアルミシェルのAMの刻印です。方向は車体右側から読めるようになっています。
 
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 AM-9の刻印のあるスチールシェルの個体です。9は1939年製を意味しています。ご覧のように刻印の方向は通常と逆で、車体左側から読むようになっています。
 
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 スターメーAM装備の1938年サン・ワスプです。レバーは先述のトップチューブ取り付け型。

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