ギアリングを外した状態のFCです。遊星ギア機構は2組ですが、左側の遊星ギア機構は入出力には関係しておらず、2段がけのカスケード機構としてクロスレシオ化に使われています。
すなわちハイ、ノーマル、ローでは右側のサンピニオンはアクスルシャフトに固定されておらず回転するので、本来のサンピニオンとしては機能しません。そのかわり左のサンピニオンが常時アクスルに固定されており、左側のプラネットケージと右サンピニオンが連結して等速で回転するので、右のサンピニオンを小さくしたのと同じ効果が得られます。これはFMと全く同じ構造ですが、違うのは右サンピニオンの歯数で、FMの30Tに対してより小さい20Tを使用しています。したがってFCのほうがクロスレシオになるわけです。
ハイ-ノーマル-ローのときの状態です。クラッチの役割をするローギアドッグが左のプラネットケージに噛み合い、同時に右サンピニオンの足に噛み合っています。この状態では右サンピニオンはフリーに回転します。
ハイ-ノーマル-ローの変速が終わり、ローからさらにワイヤーが引かれると、それまで強いスプリングの力で動かずにいたローギアドッグが右に移動し左プラネットケージとの噛み合いが外れます。それと同時にローギアドッグとアクスルシャフトが噛み合いますので(この写真では見えません)、右サンピニオンはアクスルシャフトに固定されます。つまり左遊星ギア機構を利用したカスケードが解除され、本来の右遊星ギア機構の作動になります。これがスーパーローです。
右サンピニオンを外して見たローギアドッグと左プラネットケージの関係です。これはハイ-ノーマル-ローのときの状態です。スーパーローでローギアドッグが右に移動すると、左プラネットケージとの噛み合いが外れ、同時にアクスルシャフトとの噛み合いが開始されることがわかります。ローギアドッグはどちらの状態でも右サンピニオンと噛み合っています。
操作系です。ハイーノーマル-ローではクラッチスプリングに押されているクラッチを右のキーが引っ張って変速します。クラッチがスロットいっぱいで止まったところでさらにトグルチェンを引っ張ると左のキーがローギアスプリングに押されているローギアドッグを引っ張ってスーパーローにシフトします。
ロー→スーパーローは、クラッチスプリング+ローギアスプリング+コンペンセータースプリングの3つのスプリングを圧縮することになるので、急にトリガー操作が重くなります。